処方薬の乱用が最も蔓延しているのはアメリカ合衆国ですが、それ以外にもヨーロッパやアフリカ南部、南アジアなど世界中のさまざまな地域で問題となっています。アメリカだけで1500万人以上が処方薬を乱用しています。これは、コカイン、幻覚剤、有機溶剤/吸入ガス、ヘロインの乱用者を合計した数を上回っています。
2006年、アメリカ合衆国では新たに260万人が処方薬の乱用を始めています。
アメリカ合衆国で2007年に実施されたアンケート調査では、回答前の1ヵ月間に処方薬を乱用したことのある人は、12歳から17歳では3.3%、17歳から25歳では6%に上ることがわかりました。
薬物の過剰摂取による事故死のうち、最も多いのは処方薬の乱用によるものです。2005年、アメリカ合衆国では薬物の過剰摂取による事故死が2万2400件発生しましたが、最も多かったのはオピオイド系の鎮痛剤によるもので、死亡原因の38.2%を占めています。
2005年、アメリカでは処方鎮痛剤を取っている十代の若者(12歳から17歳)は440万人に上り、230万人がリタリンのような処方薬の中枢神経刺激剤を取っていました。咳止めシロップなどの市販薬を乱用していた若者は220万人に上ります。現在では、乱用を始めた年齢の平均は13歳から14歳となっています。
過剰摂取による死亡事故 | ||
処方薬 | 主な違法薬物の合計 | 39% |
45% | (アンフェタミン + ヘロイン + メタンフェタミン + コカイン) |
過剰摂取による死亡事故のうち、鎮静剤・安定剤、オピオイド、抗うつ剤による死亡は45%を占め、コカイン、ヘロイン、メタンフェタミン、アンフェタミンを合わせた数値(39%)を上回っています。アメリカ合衆国では、かつて都市中心部の黒人居住区が最も高い死亡率を記録していましたが、現在では地方の白人共同体がそれを上回っています。同様の傾向は、薬物乱用による入院と、過剰摂取による緊急入院の件数にも見られます。2005年、薬物に関連する緊急入院は104万件でしたが、うち59万8542件が処方薬の乱用、もしくは処方薬とその他の薬物の併用に関連していました。
アンケート調査によると、十代の若者の半数近くが、処方薬は違法なストリート・ドラッグよりも安全だと考えています。また、6割から7割の若者が、自宅の常備薬を乱用していると答えています。
コロンビア大学の全米薬物依存・物質乱用センターによると、処方薬を乱用している十代の若者は、処方薬を乱用しない同世代の若者と比べ、アルコールを常用する割合は2倍、マリファナを常用する割合は5倍、ヘロインやエクスタシー、コカインなどのストリート・ドラッグを常用する割合は12倍から20倍になります。
合衆国麻薬取締局の調べによると、2007年にフェンタニルという鎮痛剤の乱用により1000人以上が死亡していることがわかりました。この薬品の作用はヘロインの30倍から50倍も強力であるとされています。